“中国人旅行客集客”について、日本企業が知っておきたいこと!

コロナ禍が落ち着き、、日本を訪れる外国人旅行客の多さが目立ちます。以前は訪日外国人の中で割合がトップだった中国人観光客も、徐々に戻ってきています。 特に、例年7~10月は訪日中国人客が多いシーズンとなっています。   日本企業としては、中国人旅行客をターゲットにした大きなビジネスチャンスが到来していると考えるでしょう。中国人旅行客はさらなる増加が見込まれるため、ビジネスチャンスはまだまだこれからやってくるのです。 このチャンスをモノにできるかどうかは、中国人旅行客を集客するため、効果的にノウハウを活用できているか否かで180度変わります。そのノウハウの中に、「共通語」「中国語」という言葉の壁を乗り越える必要性が含まれることは、言うまでもありません。 まずは、中国人旅行客が急増している理由から見ていきましょう。


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中国人旅行客が日本で増加している理由は?

日本を訪れる中国人旅行客が増加している背景には、中国人の富裕層増加があります。しかし、それだけが理由ではありません。中国人旅行客がなぜ日本にやってくるのか、日本の何に惹かれ、中国人旅行客が呼び寄せられているのかを検証しましょう。

富裕層の増加

中国国内の経済発展により、中国国内において富裕層が増加しています。日本を訪れる中国人旅行客が増えている最大の理由はやはりここにあります。裕福な中国人は世界の国から国、街から街へと旅行するようになりました。

中国人旅行客は、日本だけをターゲットにしているわけでは決してありません。とはいえ、中国は膨大な人口を抱える国です。富裕層の旅行者も相当数におよぶため、増加している訪日旅行客はその一部に過ぎないのです。

小さな国土の日本から見れば、日本を訪れる中国人観光客数は、膨大な数をほこる中国人富裕層の一部とはいえ「とても多い」と感じられます。これが、「日本を訪れる中国人旅行客が増加している」と感じられる最大の理由でしょう。

観光ビザの発給要件が緩和

もう1つ、観光ビザの発給要件が緩和されたことも、日本への中国人旅行客が増加した要因です。日本で、対中国人旅行客への観光ビザ発給要件緩和が最初に実施されたのは、2010年のこと。

2010年以前は、一定以上の所得がない中国人に対してはビザの発給を見合わせてきた日本政府が2010年に規制緩和を行ったことによって、まずは、この壁が取り払われました。

それ以来、中国人旅行客は著しく増加傾向にあるのです。次いで2015年、所得に対するさらなる要件緩和が実施されました。

以降、中国はコロナ禍直前までは国籍別訪日者数のトップをキープしていました。「日本に行きやすくなった」というシンプルな理由が、裕福層による訪日中国人や旅行者数の増加に拍車をかける形となったのです。

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個人旅行客が増えている

団体旅行客が増加すれば、個人旅行客が増えるよりもトータルの訪日者数は増加しやすいです。しかし、訪日者数が増加している理由は個人旅行客の増加も関係しています。

個人の訪日中国人旅行客が増加する理由はいくつかありますが、第一に観光ビザの発給要件が所得面で緩和されたことが挙げられます。しかし、実は、2010年以前のビザ発給規制は所得面だけではなかったのです。

2010年以前は、団体の中国人旅行客だけを対象に観光ビザ発給を許可していました。つまり所得にかかわらず、「個人」の中国人旅行客に対しては、観光ビザを発給しないという日本政府の方針だったのです。

2010年の規制緩和により、個人旅行客にも観光ビザを発給するようになったことが、中国人旅行者の増加につながりました。

このビザにまつわる一連の規制緩和以外に、個人旅行客が増えている理由は2通り考えられます。

空港の増加と格安航空会社の空路拡大

日本における格安航空会社(LCC)の登場、および航空路線拡大が個人の中国人旅行客を増加させた理由にまず挙げられます。

彼らにとって、日本の主要エアポートである成田、羽田、そして関空にLCCが乗り入れるようになったことが大きなメリットになりました。

また、中国からの直行便がある空港は、成田、羽田、関空、千歳、名古屋、那覇、福岡などがあるため、最近では日本全国への旅行がしやすくなっています。

一度日本を訪れてその良さを知り、リピーターとして何度も日本を楽しむ個人の旅行客も増えました。

訪日中国人FIT・個人で旅行する中国人観光客が増えている

旅行客を区分する際に、FITという用語をつかうことがあります。Foreign Independent Tour(個人による外国ツアー)の頭文字を採用してできた用語がFITです。

特に、訪日中国人FITの増加が著しいです。訪日中国人旅行客というと、数年前にニュースで取り上げられた爆買いの印象が鮮烈ですが、これは訪日中国人FITよりは団体旅行客に顕著な動向でした。

中国人FITが増加しているのは、爆買いに見られる「モノ」ではなく「コト(良質な日本のサービス)」を得ることを目的としているからです。

サービス、といってもいろいろな種類がありますが、質の良さを求めるなら、中国人側としては、団体より個人で旅行すると好都合な場合が確かに多いでしょう。

 

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中国人旅行客が日本に行く目的

中国人旅行客が体験したい「コト(良質な日本のサービス)」には、どのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、中国人が日本を訪れる目的について紹介します。

日本文化の体験

ひとつが日本文化を体験することです。島国・日本は、広大な中国の大陸文化から影響を受けていますが、独自で発展した点も少なくありません。日本ならではの文化体験を、3つ挙げます。

・着物の体験

京都や鎌倉、金沢などの古都では着物の体験をすることができます。

着物は色鮮やかで美しいデザインなので、中国人だけではなく外国人女性から高い人気を集めています。

リーズナブルな価格でレンタルできるうえ、プロのスタッフが丁寧に着付けをしてくれるため、着付けができなくても問題ありません。また足袋無やかんざし、着付けの小物類も借りられます。

女性グループはもちろん、カップルでの着物体験も人気です。

観光客は着物姿で歴史的な建造物・史跡、観光スポットを巡り、地元のグルメを楽しむことができます。

・温泉の入浴

日本各地には、名立たる温泉地があります。とくに中国人旅行客が足を運ぶのは、日本ならではの風情が味わえる場所や、空港・都心からのアクセスが良い場所です。

例えば、山梨県の河口湖温泉が挙げられます。河口湖温泉は富士山の麓にあり、温泉だけではなく、日本のシンボルである風景も楽しむことができるからです。

また山形県にある銀山温泉も、レトロで趣きのある温泉として高い注目を集めています。都心からのアクセスが良い温泉は、静岡県の熱海温泉があります。太平洋に隣接している熱海は、気軽にリゾート気分を味わえます。

・寺社仏閣の見学

神社仏閣は中国にもありますが、建造物や仏教美術には日本らしい考え方が反映されています。

今までは京都や鎌倉、広島が圧倒的に人気でした。しかし近年では奈良や滋賀、九州各地の神社仏閣にスポットが集まっています。メジャーな場所よりも、より深い日本文化への理解を求める外国人が増えていることが背景にあります。

日本の自然や景勝地の観光

神社仏閣と同じように、観光地においても変化が見受けられます。近年では東京や大阪といった都市だけでなく、地方の観光地にも中国人観光客が足を運んでいます。

こうしたインバウンドの流れを受け、各地方都市が、町おこしの一環として海外へPRすることが多くなりました。今まで知らなかった日本の魅力に触れられるということで、中国でも評価が上がっています。日本ならではの下町や漁港、離島など、穴場として噂になっています。

また春には桜、秋には紅葉の鑑賞は、根強い人気です。観光だけではなく、その土地の自然を見ることで、日本の四季を体感できます。

ショッピング

日本の製品は品質の良いものが揃っていると海外から高い評価を受けているため、都心の家電量販店やドラッグストア、有名ブランドショップは、中国人観光客にとって滞在中に訪れたい場所の一つとなっています。

狙いは日本製もしくは日本メーカーの高品質な家電や日用品、市販薬、衣服などです。

また、中国で購入するよりも、安くて良い商品が日本では手に入ります。例えば、100円均一ショップが絶大な人気を誇っています。

最近では、免税を受けられる店舗も増えたため、中国人旅行客が安く買い物をできる環境が整っているのです。

日本食を味わう

旅行の楽しみと言えばグルメ。

最近では観光客がコロナ禍前の水準に戻ってきつつあるため、寿司や天ぷら、ラーメン、串カツなど、様々な飲食店に外国人観光客が訪れています。

現在では外国語メニューや外国人スタッフによって、インバウンド対策をする飲食店も少なくありません。すべての外国語に対応しているわけではありませんが、世界標準の英語はもちろん中国語も標準的に使用されています。

中国人のスタッフを雇う飲食店を目にする機会も少なくないでしょう。

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中国人旅行客への対策が必要な業界

中国人旅行客が求める「コト(良質な日本のサービス)」でも、とくに対策が必要とされる業界として、小売業界と飲食業界、宿泊業界が挙げられます。

ここでは、それぞれの業界で活かせる対策について取り上げます。

小売業界

現在、中国全土では現金決済よりもキャッシュレス決済が一般的となっています。街中の市場での支払いにも現金を用いません。

日本でもキャッシュレス化が徐々に普及しつつありますが、すべての小売業界でまだ浸透しきってはいない現状にあります。

今後は、日本に訪れた中国人が買い物しやすいように、スマホ・コード決済を導入することを視野に入れましょう。なお中国では、AlipayやWeChat Payが主流です。

また消費意欲を促進するための施策が求められます。効果があるのは割引です。例えばクーポンや割引券、免税制度が挙げられます。

飲食業界

メニューに外国語表記を入れることは早急に求められます。翻訳アプリ・デバイスを活用することも手立てのひとつです。

お店の入口で外国語に対応しているかわかるように、わかりやすい案内をしましょう。中国人がお店に興味を持っても、言語が通じなければ入店する機会を損失することになります。

中国人スタッフを雇用することも対策として挙げられます。育成の手間も考慮しなければなりませんが、中国人旅行客が増えてきているお店では検討する価値はあるでしょう。

宿泊業界

都市部では、外国人対応をするホテルやホステル、旅館、民泊などは珍しくありません。しかし地方都市では、まだまだ対応が遅れています。

まずは、近隣の観光地へ向かうにあたっての外国語の案内や地図を用意しましょう。

海外のガイドブックは文字情報だけの書籍が主流なため、土地に不慣れな外国人に向けて地図や絵で伝えることによって、より丁寧な案内ができます。目的地へ行きやすくなり、施設の評価が上がりやすくなります。

また、温泉のある宿泊施設は、外国人が入浴しやすい環境を作る必要があるでしょう。温泉における利用上のルールは、外国人にとって一般的ではありません。

どのように利用すれば良いのか、禁止事項はあるのかなど、わかりやすいように案内をしましょう。

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中国人旅行客の受け入れには、中国語は必要

日本人が海外旅行をする際には、言葉が通じないことを不安視します。それは訪日中国人も同じです。英語に堪能な中国人は多いですが、相手は日本語しか話せない日本人となると英語はあまり大きな意味をもちません。

訪日旅行者は、やはり中国語で話せる場所を好みます。中国人旅行者の集客を考えるなら、中国語が堪能な日本人がいる環境も必要となります。

中国語による接客が安心感を生む

旅先で言葉が通じれば、安心感を得ることができます。中国人旅行者にとって、日本でも中国語が通じることは重要なポイントです。安心感は心地よさにも通じ、これが、中国人旅行者集客のヒントになります。

さらなるヒントとして、訪日中国人旅行者を対象とした調査では、すでに中国人の集客に成功している業種や店舗の実績を見ていくと次のような結果が出ました。

「訪日中国人旅行客が利用したい店舗」

1位 伊勢丹    53%
2位 三越      44%
3位 マツモトキヨシ 43%
4位 ラオックス   18%

「中国語表記の案内が充実している(47%)」「中国語が通じるスタッフがいる(41%)」ことを理由として、中国人旅行客がこれらの店舗を選択しているのです。

[参照]訪日中国人旅行者の買い物行動に関する調査結果:プラネット社より

中国語を使えることが、中国人の集客を得るための手がかりになっていることがわかります。

中国語によるオンライン・オフライン集客

中国語によるオンライン集客も効果的です。中国人旅行客が増加の一途をたどる今、お店にWi-Fi環境を整備することで大きな効果が期待できます。訪れた店舗情報を、中国人自らが広告塔としての役割を果たし、SNS上で拡散してくれるためです。
一方、オフライン集客の観点も軽視できません。外国人観光客が増加するということは、日本が多様な価値観を受け入れなければならないことを意味します。当然中国人特有の価値観も受け入れる必要があります。

気持ちよく観光をしてもらうためには、中国語で「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」といったあいさつを掲げておくことはもちろん、注意書きの掲示も必要です。

たとえば、列に割り込む、店内で大声をあげるなどといった行動に対して、日本人が驚く場面が見られます。日本ではマナー違反となることを、彼らは理解していないのです。

ここで重要なことは、それが悪意によるものではないということです。あらかじめ、中国語で書かれた注意書きや案内表記を掲示しておくことがポイントです。掲示板を見て中国語で書かれた注意や案内を守ってくれるでしょう。

中国人旅行客は、馴染みの深い言葉で書かれた案内表記に親切心を感じて、リピーターになってくれたり、まわりの人にその良さを口コミで伝えてくれたりします。これがオフライン集客の効果です。

中国人旅行客集客のノウハウを研究

中国人旅行客数の増加傾向に胡坐をかいて企業努力をしないままでいると、大事なビジネスチャンスを逃してしまうことになります。集客のために、必要なノウハウを徹底的に研究した企業こそが、さらなるビジネスチャンスを掴むこととなるでしょう。

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まとめ

中国国内における富裕層の増加や、日本政府によるビザ発給条件の規制緩和、格安航空会社の空路拡大などを背景に増加している中国人観光客を取り込み、ビジネスチャンスへつなげるためには、日本人としてのマナーや固定概念だけにとらわれず、相手の文化や考え方を知る事が必要です。

そして、彼らの言葉の壁の不安を取り除くことによっても、集客の可能性は大きく広がることでしょう。