中国人は旧正月(春節)の休みはどう過ごす?日本とどう違う?

日本でいう「正月休み」は、世界各国で存在します。しかし、その期間は国によって異なります。また同じアジア圏内でも、それぞれの国で休みが違います。中国では日本でいう「旧正月」のことを「春節」といい、この期間が休みとなっているのです。 日本には日本の休みの過ごし方があるように、中国には中国の過ごし方があります。そして春節の時期、中国では多くのイベントが行われています。しかし近年は、春節を日本で過ごす人も増えてきました。この記事では、春節の過ごし方に加え、中国人観光客の動向を解説しながら、インバウンド対策についてもご紹介します。


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中国人の休みといえば春節

日本でいう「旧暦の正月」を中国では「春節」といいます。また、日本の正月は1月1日で日付が変わることはありませんが、中国では同じ日付ではなく、毎年日付が変わります

春節(シュンセツ)とは

春節とは日本でいう旧暦の正月のことを指ますが、それは中国だけではありません。
中国に限らず、例えば、台湾・韓国・北朝鮮はもとより、ベトナム・シンガポール・マレーシア・インドネシア・ブルネイ・モンゴルなども、「年越し」といえば、春節のことを示す国が多いです。

日本でも昔は、「年越し」といえば、旧正月のことを指していました。しかし、明治維新後に政府が太陰暦を太陽暦に変えたという歴史があり、そこから元旦に正月を迎えるようになったといわれています。

毎年変わる中国の春節・休みは1週間

中国の旧正月(春節)の休みの期間は1週間となっています。旧正月(春節)は月の満ち欠けを基準にした太陰暦に基づき、毎年その日付は変わっています。そのため旧正月(春節)の詳細については毎年発表されるシステムです。

例えば2023年の春節は1月22日で、連休は1月21日~1月27日の1週間でした。2024年の春節は2月10日で、連休は2月10日(土)~2月17日(土)でした。また、旧暦の大みそかにあたる2月9日も、年次有休等の活用で従業員に休暇を与えることが奨励されています。

2025年度はまだ祝日スケジュールが公表されていませんが、春節が1月28日~2月3日までが連休になるのではと予想されています。

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中国人の春節の過ごし方

中国人は旧正月(春節)をどのように過ごすのでしょうか。1週間の休みのうち、日によりそれぞれ異なる過ごし方をするのが特徴です。

小年(シャオニエン)・除夕(大晦日)

小年(シャオニエン)は地域によって日付が異なりますが、たいていの場合は旧暦の12月23日か24日、一部の地域では25日に行われることが多いです。

小年(シャオニエン)の期間に行われる伝統行事を「祭竈節(さいそうせつ)」といい、囲炉裏や台所などにお供え物をし、かまどの神を祀ります。

この日から年越しに向け、準備を始めます。春節の飾りものを飾ったり、家の掃除をしたりして過ごします。日本の年末の過ごし方が小年(シャオニエン)の過ごし方です。

除夕(じょせき)は日本でいう大晦日のこと。日本では大晦日に紅白歌合戦があるように、中国にも紅白歌合戦と同じ位置づけの「春節聯晩会」というテレビ番組があります。こちらのテレビ番組を家族でみながら、新しい年を迎えるというのが中国では恒例のようです。

また、中国では魔除けとして年越しの晩である除夕に爆竹を盛大に鳴らし、花火を楽しむ習慣があります。年の変わり目の12時には爆竹と花火はピークに達します。

しかし、近年中国で問題になっている大気汚染の関係で、打ち上げが禁止になっている地域もあります。その地域で爆竹・花火をした違反者は数万元の罰金を支払うことになるので、気を付けなければなりません。

大年初一・正月初五・元宵節

日本でいう元旦を中国では「大年初一」といい、旧暦の1月1日~1月4日までの期間を指します。日本と同じように、中国でもこの期間に親戚への挨拶回りをするのが恒例です。

旧暦の1月5日は「正月初五」といい、お金の神様である「財神」がやってくる大切な日です。そのため春節期間中の中で最も盛大に爆竹や花火を打ち上げて、財神を迎えるという儀式をとっています。

「元宵節(げんしょうせつ)」は旧暦でいうと1月15日を指し、春が来たことをお祝いする伝統行事です。また、元宵節は新しい年の最初の満月の日でもあります。

日本でいう十五夜のように灯籠を飾り、「元宵」という中華白玉を食べながら一家団欒して過ごすのが恒例です。この日をもって中国の正月は終了となります。

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中国人の春節の楽しみ方

前述したように、春節期間中、中国では一家団欒や伝統行事で年越し・新年を祝うことがわかります。

しかし、その他にはどのように休日を楽しんでいるのでしょうか。

人気の春節旅行スポット(中国国内)

春節期間中のの中国国内の旅行者は約3億人を超えるといわれています。それは中国国内で近年、高速鉄道などの交通網が発達したことが背景にあると考えられます。そのため、帰省して家族と年を越すという過ごし方から国内旅行の需要が増加しているのです。

特に、ショッピングセンターやテーマパークなどで多くの人出が予想されています。中国国内で、より質の高い製品やサービスの需要が高まっている傾向があることから、スポーツやレジャーなども人気となっています。

施設以外ではどのようなスポットが春節の旅行先として人気なのでしょうか。まず挙げられるのは、万里の長城などの世界遺産が集まる観光地である北京です。

厦門(アモイ)も世界遺産である鼓浪嶼(コロンス)など見所がたくさんあり、温暖な気候が人気のスポットになります。

三亜は海南島の最南端に位置し、年中温暖な気候なので寒い春節の時期に人気の観光地です。少数民族の文化に触れたい人は昆明がおすすめです。気候も温暖なので過ごしやすいといわれています。

ハルピンは春節の時期に世界三大氷祭りの1つである「ハルピン氷祭り」が開催されるため、この祭りに参加するために訪れる人が多いようです。ハルピンと同じく氷祭りが開催される長白山保護区も人気の旅行先となっています。

長春は氷雪の観光祭りやスキーの祭りが開催されるので、スポーツを楽しみたい人に人気のスポットです。

激辛料理が好きな人は成都がおすすめです。世界遺産も多く、食もレジャーも楽しめる観光地になります。

中国の街並みを楽しみたい人は桂林がおすすめです。美しい景観の伝統的な観光スポットになっています。

西安は兵馬俑など唐の都や長安の世界遺産を楽しむことができます。それだけではなく美味しい餃子も魅力の観光地です。

このように、春節の旅行先では観光スポットとして有名なところに人気が集まっているようです。

春節の食べ物・飾りつけ

日本では年末に年越しそばを食べますが、中国の春節では何を食べるのでしょうか。

北京を含む中国北方の正月の代表的な食べ物は餃子です。

中国で餃子といえば、水餃子のことを指します。餃子の独特な形は中国の昔のお金である「元宝」がルーツといわれています。このことから、めでたい席で餃子を食べることで「金運に恵まれますように」という縁起を担ぐ習慣が生まれたのです。

また、自分の食べた水餃子の具で1年の金運や健康運を占うという、少し変わった食べ方もあるようです。

大晦日である除夕から、家族が集まって餃子作りが始まります。「年越しに餃子を食べる」という習慣は明の時代のころから始まったといわれています。そして春節当日から5日間という時間をかけて餃子を食べるのが伝統的な習慣です。

中国の春節の飾りつけは日本の正月の渋い色彩とは異なり、赤・黄・ゴールドを中心としたきらびやかなものが多いです。

日本の正月飾りでもある門松・しめ縄・鏡餅などに似た飾りも中国にはあります。その代表的なものとして有名なものが「福字」と「春聯」です。

福字とは「福」と大きく書かれた飾りもので、貼る場所は家の門や壁。この福字の飾り物は家によって逆さまに飾られていることがあります。

それは「倒」と「到」の発音が中国では同じことから、「倒福」(福が逆さま)が「到福」(福が訪れる)と同じ意味を表すからといわれています。

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春節の時期に日本へ訪れる中国人観光客

今までは中国国内で、春節を過ごす人が多くいました。しかし、まとまった休みがとれる春節に国外へ訪れる中国人観光客が増えてきています。

なかでも人気の行き先が日本や、ビザが免除された東南アジア地域です。どのような理由で日本が人気の旅行先に入っているのでしょうか。

春節の旅行先に日本へ訪れる中国人はますます増加

春節の旅行先として、日本が選ばれる理由の1つに「近さ」があります。飛行機で北京から羽田まで4時間ほど、上海から大阪までは約2時間半で到着します。

時差も1時間しかありません。中国に戻ったとしても、時差が1時間くらいであれば、仕事や日常生活に支障をきたすことは考えにくいでしょう。国内旅行のような手軽さで、中国人は日本に訪れることができます。

韓国やロシアといった東アジアの国も中国からは近いのですが、近隣諸国の中でも日本は治安やマナーの良さで評価されています。短時間で行けるだけではなく、安全で快適に過ごせることがメリットです。

公共交通機関や施設はもちろんホテル・旅館の宿泊施設においても、日本は治安が良いという点が評価されています。国によっては情勢が悪く、旅行者を狙った犯罪が多発している地域もあります。このような心配が日本ではありません。

さらに衛生環境が優れていることも、大きなポイントです。街中では清掃が行き届いており、人々が気持ち良く過ごせる環境が整備されています。

格安航空会社の躍進も中国人旅行客の訪日を後押ししています。日本への旅行人気を受けて、中国の各航空会社が成田空港・羽田空港・関西空港・中部空港・福岡空港・新千歳空港などへの発着便を増加させています。日本の航空会社は、価格競争において苦戦を強いられている状況ですが、中国人にとってはよりリーズナブルに渡航できる機会が巡ってきているのです。

「モノ消費」から「コト消費」へニーズが移り変わる

春節のタイミングで日本を訪れる中国人は、どのような消費行動をしているのでしょうか。

かつてマスメディアを賑わせたのは、爆買いする中国人です。大型のスーツケース・キャリーバッグを運びながら、ドラッグストアやブランドショップ、家電量販店で大量に商品を購入する消費行動にスポットライトが当たりました。

このイメージは、今も色濃く残っているかもしれません。しかし数年前から、今までの「モノ消費」から「コト消費」へと少しずつ変わり始めています。

「コト消費」とは、商品の購入ではなく体験することに価値を見出す消費行動です。その中でも特に日本ならではの文化を体験することに人気が集まっています。例えば、和紙漉きや茶道、舞妓さんとのお座敷遊び、着物体験、神社仏閣巡り、温泉などが挙げられます。

なぜ中国人の消費行動に変化が起きたのでしょうか。

1つは、越境ECサイトの台頭があります。日本にわざわざ足を運ばなくても、インターネットを通して日本製品が気軽に購入できるのです。購入した商品を、持ち運ぶ手間もありません。中国国内にいながら、買い物を日本で楽しむことと同じ体験ができるようになりました。

もう1つの理由は、SNS・動画配信サービスによる情報発信によって、日本の情報が浸透しやすくなったことが挙げられます。中国国内では、日本では主流のFacebookやTwitter、instagramは使用できません。WeChat(微信)、Weibo(微博)、 iQIYI(愛奇芸・爱奇艺)、Youku(優酷・优酷)といった独自のサービスが普及しています。

SNS・動画配信サービスを使って、日本での旅行の様子が中国人ユーザーによって配信されるようになりました。その情報が共有・拡散され、日本国内の魅力が知られるようになっていったのです。

このような背景で注目をされたのが「モノ消費」ではなく「コト消費」です。何を買ったのかよりも、どこに行ってどんな体験をしたのかが、中国人の心つかむようになります。その結果日本ならではの「コト消費」を求めて、中国から足を運ぶ人が、急速に増えました。

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春節期間に企業がとるべきインバウンド対策

春節の時期に日本へ訪れる中国人観光客について、その消費行動をご紹介しました。では春節期間に、日本企業はどのような手を打てば良いのでしょうか。

中国人をターゲットとした場合のインバウンド対策に関して、2つのポイントでご紹介します。

キャッシュレスの採用

1つはキャッシュレス決済を導入することです。

近年、中国国内ではキャッシュレス化が加速しています。国民の多くは、日常的な買い物でも現金では支払いません。一方で、日本国内ではまだまだキャッシュレス化は遅れています。徐々にキャッシュレスを採用する企業は増えてきましたが、一般的な決済方法にはまだなっていません。

キャッシュレスの中でも、これからの時代に必要とされるのがスマホ・コード決済です。

PayPayやメルペイ、LINE pay、楽天ペイが日本では人気ですが、中国ではAlipayやWe Chat Payが主流です。中国人が購買しやすいように、スマホ・コード決済を導入することが求められます。

スマホ・コード決済を導入するということは、ただ決済がスムーズになるだけではなく、通貨を両替する手間も省くことができます。

また中国のクレジット会社と連携し、QRコードを使ったキャッシュレス決済やキャッシュバックなどを行う企業もあります。数%でもキャッシュバックを受けることができれば、旅行客にとっては大きなメリットです。

特に宿泊業界や飲食業界、小売業界に携わっている企業は、このような対応をすることで、中国人観光客の利用増加につなげることができます。

中国語への対応

英語表記のメニューを採用している店舗・企業も増えてきましたが、可能であれば中国語にも対応するツールを用意することも重要です。

対策としては、中国人スタッフを採用したり、翻訳機能のアプリを使用したりすることです。しかし、中国人スタッフを採用する場合は、育成の時間が必要であったり、本人が日本での労働環境に慣れるまでに時間がかかることもあります。

とはいっても、中国人への接客が、今まで以上にスムーズになることは明白です。語学だけではなく、中国人の考え方や心情、ニーズを読み取った接客が可能です。

中国人に配慮した接客サービスができれば、中国人観光客からの評判や満足度が高くなるでしょう。それが口コミで拡散されれば、さらなる集客が見込めます。

また中国人旅行客を対象にしたマーケットへ参入・拡大するために、新しいアイデアをもらうことができます。中国人スタッフを採用することで、日本人の従業員にはない発想力や感性、価値観が期待できるでしょう。

一方で翻訳機能があるアプリは導入しやすく、操作も簡単です。コミュニケーションがそれほど必要のない店であれば、アプリは大いに活躍してくれます。

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まとめ

日本の正月と中国の春節は似ている部分もありますが、中国独自の文化もあり、日本とは異なる過ごし方をしています。近年は、春節に中国国内ではなく日本に訪れる中国人が増えてきました。

これには、日本へ行きやすい環境が整備されたことが背景にあります。近年では、旅行の目的も変化してきており、かつてのような爆買いではなく、日本特有文化の体験型消費を求める傾向に変わってきました。

「コト消費」のニーズに、日本の企業は対応していかなければなりません。インバウンド対策をしっかりと行ったうえで、中国人観光客の方々に満足していただけるようなおもてなしを目指すことが大切です。