外国人労働者が帰国をする際に必要な手続きとは

日本で暮らす外国人が、帰国を行うパターンは主に2つあります。「本帰国」と「一時帰国」です。本帰国の場合は、一時帰国と違って退職が伴います。 そのため、外国人労働者を雇い入れている企業の担当者は、帰国と合わせた退職の手続きについても理解しておくことが必要になります。 ここでは、退職を伴う「本帰国」の場合と、里帰りなどの際の「一時帰国」の場合の手続きを解説します。


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外国人労働者が帰国をするときに必要な手続き

外国人労働者が帰国を行う場合、会社から退職するのが一般的です。ここでは、外国人の退職に伴う手続きについて解説します。

会社が行う手続き

外国人が退職を行う場合「日本人と同様の手続き」と「外国人に特有な手続き」の2種類の手続きを行う必要があります。

日本人の場合と同様の一般的な手続きは、以下の通りです。

・退職証明書を発行する
・離職票を発行し本人に渡す
・源泉徴収票を発行し本人に渡す
・保険証を返却してもらう
・貸し付けた制服などを返してもらう

一般的な日本人が退職するのと異なる手続きは、

・外国人雇用状況の届出
法律により離職時(就職時にも)にハローワークへ提出する書類です。外国人の雇用状況の把握や転職支援などに利用されます。雇用保険の資格喪失届を提出すると外国人雇用状況の提出は不要になります。

・中長期在留者の受入れに関する届出
外国人労働者の受け入れに関する届出です。退職の場合、受け入れを終えることになるため、退職後14日以内に地方出入国在留管理官署に提出しなければなりません。なお、外国人の雇い入れ状況がわかる「外国人雇用状況」の届出を提出している場合は、手続きは必要ありません。

外国人が行う手続き

仕事を辞め帰国する場合、次のような手続きを外国人本人が行う必要があります。

・住民票の転出
日本から国外に出る場合でも、住民票の転出届が必要です。また、併せてマイナンバー(通知)カードも返します。

・年金脱退一時金の受け取り
年金の受給資格を失うことから、手続きをすれば脱退一時金を受け取ることができます。外国人労働者が6カ月以上年金に入っていたときは、2年以内の期限付きで脱退一時金を受け取ることが可能です。

入国管理局への届出
退職したときと日本を出るときのそれぞれで届出を行います。退職時は14日以内に「所属(契約)機関に関する届け出」を提出し、出国前には在留カードを返します。

以上の事務的な手続きの他に、出国前には生活に関わる手続きも終えなければなりません。具体的には銀行口座の解約や電気・水・ガスの停止、不用品の処分などです。

[参考]脱退一時金の制度|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
[参考]所属(契約)機関に関する届出 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

 

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外国人労働者が帰国をする際にしておくべきこと

外国人労働者の帰国手続きは非常に煩雑です。退職前に当該外国人とよく話し合い、帰国時のトラブルを防ぐ努力を行いましょう。

退職後の連絡先を聞いておく

外国人労働者が退職後に帰国を予定している場合、退職の手続きで不備があったときに連絡がとれるよう、連絡先を確認しておくことが大切です。

なぜなら、退職時の手続きがすべてスムーズに進むとは限らないからです。たとえば、退職時の書類がすぐに揃わないことがあります。その場合、書類を後日本人に渡す必要があり、その時に円滑に連絡を取り合うことができなければ非常に不便なのです。

また、とくに外国人労働者の雇用経験が少ないうちは、手続きを慎重に進めていたとしても書類自体が複雑なので、抜け漏れも多くなるでしょう。時間が経ってから発覚することもよくあるため、何かあったときにすぐに連絡が取れるようにしておきましょう。

さらに、外国人本人から退職後の書類を請求される可能性もあります。その場合、会社が把握していない連絡先から連絡が来ても本人とは気がつかないケースも考えられるため、特定のメールアドレスなど決まった連絡手段を用意してください。

帰国の手続きについて話し合っておく

外国人の退職と帰国が決まったら、帰国手続きについて事前に確認しましょう。なぜなら、帰国の手続きについてあまり理解していない外国人労働者もいるためです。

帰国の手続きは複雑なため、外国人本人が企業からの案内がないままに自身で手続きを進めてしまうと、後々トラブルになる可能性があります。

そうならないために、事前に外国人の帰国手続きに関する理解の確認と、不足知識の補完を行うことが大切です。

話し合いの際は、口頭だけでなく書面でも説明を行います。外国人がトラブルなく帰国できるよう、必要なサポートが受けられる窓口の紹介も行いましょう。

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一時帰国のときの手続きはどうする?

前述のとおり、外国人の帰国形態には日本へ戻る予定のない「本帰国」と一時的に日本を離れる「一時帰国」の2種類があります。ここでは、一時帰国のケースについて必要な手続きを解説します。

一時帰国の場合、帰国する期間によって手続きが異なります。

一般的に、在留資格を得て日本に滞在する外国人が一度国外へ出て日本に再入国する場合は、再入国許可を得る必要があります。再入国許可は、外国人が入国する際の審査を簡略化するためのものです。

簡略化にあたって、「3月」以下の在留期間の方、「短期滞在」の在留資格で在留する方以外の方は、出国から再入国までの期間が1年以内であれば、出入国審査の際に、有効期限内のパスポートと在留カードを提示することで再入国許可の手続きが不要の「みなし再入国許可」という制度が適用されることになっています。

出国時には、再入国出国記録(再入国EDカード)を記載のうえ、入国審査官に提示し、みなし再入国許可による出国を希望する旨を伝えます。

一方、出国が1年以上の長期に渡る場合は、みなし再入国許可の制度が利用できないため、原則として通常の再入国許可の手続きが必要です。再入国許可で入国できる有効期間は5年間です。(特別永住者の場合は6年間です)

[参考]みなし再入国許可(入管法第26条の2) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
再入国許可(入管法第26条) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

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まとめ

外国人労働者の帰国手続きは、本帰国に関する手続きと一時帰国に関する手続きの2種類があります。
本帰国に関する手続きや長期的な帰国の手続きを行う場合、退職を伴うことが一般的であるためそれにともなう手続きが必要です。
また、一時帰国の場合は帰国する期間によって手続きが異なり、「みなし再入国許可」等の手続きを行うことで、出入国が簡単にできるようになります。

帰国の種類によって、必要な手続きは変わりますので、後々のトラブルを防ぐ意味でも、帰国前には外国人労働者とよく話し合い、手続きや手順について確認・理解しておくことが大切です。