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外国人が日本で永住権を取得するメリット
永住権とは、一定の条件を満たした外国人に認められる在留資格のひとつです。ここでは、永住権と他の在留資格との違いを踏まえて、資格取得のメリットを紹介します。
ビザを更新する必要がなくなる
永住権を取得すると、本人が問題を起こさない限り半永久的に日本に住み続けることができます。なぜなら、永住権は通常のビザと違い、日本への滞在期間に制限がないためです。
通常のビザであれば、1年や3年など、日本に滞在できる期間に定めがあります。もし期日が近づけば、更新手続きを行うか、母国に帰国しなければなりません。
永住権の場合、日本にいられる期間に定めはなく、また、ビザの更新手続きも必要ありません。
就労の制限がなくなる
永住権保有者には、就労場所を自由に選ぶ権利が認められます。
原則的に、ビザは入国の目的と異なる就労を行うことができません。たとえば、医療ビザであれば医療業界で、介護ビザであれば介護業界で働くことを前提に日本滞在が許されます。
さらに、ビザによっては、就労形態や就労できる期間に制限がある場合もあります。
そのため、日本国内での活動を変更する場合、ビザを取得し直さなければなりません。たとえば、留学ビザを持つものが介護士として長期間日本で働こうと思うと、一定の要件を満たして介護ビザを取得する必要があるのです。
その点、永住権を取得すると就労制限がなくなります。日本人と同じように就きたい職業を自由に選ぶことができるようになるのです。
社会的信用が上がる
永住権を持っているということは、原則的に日本で長く暮らしてきた証明になります。また、永住権保有者は、政府より「日本で半永久的に暮らしてもよい」と認められるほど「信用を得ている人物である」とも考えられます。
そのため、日本で永住権を取得することは、日本人並みの社会的信用を得ることにつながります。
具体的には、銀行からの信用が高まり、より高いクラスのクレジットカードをつくりやすくなります。また、住宅ローンも組みやすくなるため、不動産購入にも有利です。同様に、自動車も購入しやすくなります。
社会的信用の獲得は、日本でのより豊かな暮らしを実現します。
外国人が永住権を取得するための条件
永住権を取得するためには、多くの厳しい条件をクリアしなければなりません。ここでは、具体的な要件について解説します。
素行が善良であること
永住権取得の第一条件が、外国人の素行が善良であることです。
なかでも法律の遵守は絶対です。大きな犯罪はもっての外ですが、小さな交通違反などでも何度も積み重なってしまうと、永住権の許可がおりないことがあるため注意が必要です。
また、法律を守ること以外にも、地域住民として常識や地域のルールを守り、節度ある生活を送っていることも重要なポイントです。
日常生活では地域住民との揉め事や、他者から避難される行動を起こさないよう気をつけましょう。
独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
永住権を認められるためには、当該外国人が日本で自立して生活していなければなりません。自立とは、日常生活において、公共の負担にならず、自分の力で生計を立てることです。
そこで重視されるポイントは「将来にわたって安定した生活を送ることができるかどうか」という点です。そのため、職に困らない職業上の技能の有無や、十分な収入の有無などが判定されます。
また、保有する資産も重要です。資産は、世帯単位で判断されます。
その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
永住権を得るには、日本の居住者としての実績も重要な判断材料となります。
実績には、主に次のような事項が判断材料として用いられます。
・10年以上の日本滞在実績
原則10年以上、日本に滞在している事実が必要です。この10年のうち、5年以上は就労資格もしくは居住資格を持って在留していることが求められます。
ただし、特例として定められている条件に合えば、10年未満の滞在でも永住権を取得できる可能性があります。
・納税の義務を履行していること
日本滞在中に、懲罰や刑罰を受けていないこと、税金や保険料を滞りなく支払っていなければなりません。また、年金や国民健康保険の支払い実績が判定材料にされる場合もあります。
・刑を受けていないこと
素行が善良であることの項目でも解説しましたが、法律順守は必須ですので、裁判で罰金や懲役の刑を受けたことがない方に限ります。
・現在持っている在留資格が最長の在留期間であること
保有する在留資格での滞在が3年ある場合、最長の在留資格と見なされます。
現在、一部の在留資格では最長の在留期間が5年となっていますが、当面「3年」以上の在留期間を持っていればこの条件を満たします。
・公衆衛生上、有害となるおそれがないこと
有害な感染症など、公衆衛生上の問題を持っていないことを指します。また住んでいる住宅の状態がゴミ屋敷などで、他の住民に悪影響を与えていないかということも基準になります。
[参考]永住許可に関するガイドライン(令和6年6月10日改訂) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
永住権を取得する際に必要な手続き
永住権を得るには、必要な書類を揃えて、居住地を管轄する地方出入国在留管理官署にビザ申請の手続きを行わなければなりません。
ここでは、具体的な必要書類や申請方法を解説します。
永住権取得に必要な書類
ビザ申請に必要な書類は、現在取得している在留資格や一人ひとりの状況によって異なります。またスムーズに永住の許可をもらうためには書類の準備が欠かせません。それらを踏まえた上で、必要となる提出物は次のようなものがあります。
1.指定書式の申請書類
永住許可申請書
身元保証書
了解書
理由書
2.役所、勤務先での発行書類
配偶者の戸籍謄本(日本人との婚姻関係がある場合のみ※永住者の配偶者の場合は婚姻証明書)
住民票のうつし(同居家族全員が記載されているもの)
住民税の課税・納税証明書(各直近3年または1年)
国民健康保険納税証明書(社保加入者不要)
国民年金保険料領収証書のコピー(厚生年金の場合はねんきん定期便など)
在職証明書(会社員の場合)
確定申告書控えのコピー(個人事業主の場合)
3.審査で有利な書類
預貯金証明書(通帳のコピーなど)
不動産謄本
表彰状(感謝状や証明書類)
4.身分証
旅券
在留カード
証明写真(永住許可申請書1枚目指定箇所に張り付け)
健康保険証のコピー(同居家族全員分)
※国民健康保険税納付済領収書(国民健康保険加入者のみ)
5.身元保証人書類
身元保証人の身分証明書コピー(運転免許証など)
[参照]永住許可申請 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
手続きの流れ
ここでは、永住権申請の大まかな流れを説明します。申請からビザ取得までは、概ね次のような手順となります。
1.出入国在留管理官署に相談
住所地を管轄する地方出入国在留管理官署に申請の相談をします。ここで、申請要件へ合致しているかが確認され、手続きの案内を受けます。
2.必要書類を用意
永住権申請には膨大な書類が必要となります。なかには、申請から交付までに時間がかかるものや、有効期限が定められたものもあるので、計画的に集めましょう。
3.申請・受理
指定された場所に、必要な書類、住所と名前を書いたはがきを提出します。都市部では窓口が込み合っていることも多いため、時間に余裕をもって申請しましょう。
4.審査
提出された書類をもとに審査されます。ときには追加で書類の提出を求められる場合もあります。
5.結果の通知
結果ははがきで受け取ります。許可された場合、永住権カードを受け取りに窓口へ赴きます。
永住権申請から取得までの、大まかな流れを紹介しました。手続きのなかには、専門的な知識が必要なものもあります。そのため、永住権申請が初めての人は、思いの外時間がかかってしまうこともあるでしょう。
そこで、外国人社員の永住権取得でわからないことや不安な点があるなら、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
永住権を取得することで、外国人は日本での生活において日本人とほとんど同じ待遇を享受することができます。具体的には、ビザの更新が不要になり、就労の自由が増し、社会的信用も向上します。しかし、永住権の取得には厳格な要件があり、申請手続きも複雑です。
永住権を取得するためには、法令順守、安定した生活基盤、長期滞在実績など多くの条件を満たす必要があります。また、申請プロセスには多くの書類が必要で、手続きにかかる時間や労力も相応です。これに加え、申請の際に不安や疑問がある場合には、専門家のサポートを受けることがスムーズな取得につながります。
総じて、永住権は日本での生活の安定性を大いに高めるものですが、その取得には適切な準備と理解が求められます。