特定活動の指定書とは何?外国人が就労できる方法は?

人手不足で外国人労働者を雇用したいと考える企業が増えています。日本人の雇用と異なり様々な規制や知っておくべき条件があります。その一つに特定活動の指定書があります。特定活動の指定書とは何か、また外国人が就労できる方法について解説いたします。


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外国人材の採用を積極的に進める企業が増える中で、在留資格「特定活動」に注目が集まっています。これは、就職活動中の留学生や、就労開始前の滞在、日本での起業準備をしている人、転職準備中の人などに適用される、非常に柔軟な在留資格です。

しかし、企業の人事担当者の中には、「特定活動」という言葉は知っていても、その中身や運用の実態については理解が曖昧なまま採用を進めてしまうケースも少なくありません。特に重要なのが、「指定書」の存在です。在留カードに「特定活動」と記載されていても、その人が実際にどのような活動を許可されているか、労働が許可されているのかどうかなど、指定書を見なければ判断できません。

本記事では、特定活動の在留資格とはどのようなものか、そして外国人がその資格のもとでどのように就労できるのかを、詳しく解説していきます。採用時の確認ポイントや、就労の可否を見極めるための注意点など、現場で必要な知識をわかりやすくご紹介します。

 

在留資格「特定活動」とは

「特定活動」は、在留資格のひとつで、他の就労ビザのように活動内容が法律で明確に定められているわけではありません。代わりに、法務大臣が個別に内容を指定する仕組みになっており、状況に応じて幅広い活動が認められる柔軟な制度です。

この柔軟性が特徴で、たとえば次のようなケースに適用されます:

  • 日本の大学等を卒業した留学生が、卒業後に就職活動を継続するケース
  • 内定済みの留学生が、卒業から入社時期までに時間があく場合に滞在するケース
  • EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士の候補者
  • ワーキングホリデー制度に基づいて滞在する若年層
  • 外国人留学生が日本で起業準備を行うケース

こうした活動ごとに、法務省がその内容を個別に認める形で、「この外国人はこの活動に限って日本に在留できます」と指定されるのが特定活動の仕組みです。

なお、滞在期間は活動の内容により異なり、5年、3年、1年、6か月、3か月など個別に設定されます。したがって、在留期間の管理も人事担当者にとって重要なポイントとなります。

[参考]在留資格「特定活動」 | 出入国在留管理庁

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特定活動の指定書とは何?

続いて特定活動の指定書とは何か、さらに特定活動で就労することは可能なのかについてみていきましょう。

在留カードと共に発行される

特定活動の指定書は在留カードと共に発行されます。

特定活動はケースによって活動内容・滞在期間・就労可否などが異なるため、「この外国人には○○の特定活動を行うことを前提として在留資格を与える」と規定したものが特定活動の指定書なのです。

ただし特定活動には大きく分けて2種類あり、明確に活動内容が指定されている「告示特定活動」と、明確にされていないものがあります。

告示特定活動の中には、「ワーキングホリデー」や「家事使用人」「医療・入院」「スキーインストラクター」など、47種類もの活動内容が認められています。(2023年8月現在)

ちなみに特定活動の指定書による在留資格は最大5年とされています。

指定書はパスポートに添付されていますので、外国人を雇用しようとする際は在留カードと共に、指定書の内容まで確認することが大切です。そしてここに規定されていない活動は行うことが許されていないので、それをさせると違法行為となります。

[参考]法務省:在留資格「特定活動」について

 

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特定活動で就労は可能なのか?

では特定活動の資格でで就労させることは可能なのでしょうか?

特定活動は基本的には就労を前提としていません。そのため、特定活動の指定書に「就労」できる旨が記載されていないと就労させることはできません。特定活動の在留資格を持っていたとしても、必ず全員が就労できるとは限らないということを知っておきましょう。

たとえば「卒業後就職活動を行う留学生」は資格外活動許可がないと就労させることはできません。許可がないまま就労させると不法就労となりますので注意が必要です。また雇用した企業側も、不法就労助長罪といった罪に問われるリスクがあります。

「ワーキング・ホリデー制度による入国者」による外国人は時間の制限なく自由に就労することが可能です。

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特定活動ビザの外国人を雇用する際の注意点

続いて特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際の注意点として、資格外活動の許可について、また働く時間の制限についても詳しくご紹介します。

資格外活動の許可が必要となる

前述した通り、特定活動の指定書を持っている外国人がみんな就労できるわけではありません。

ご紹介した「卒業後就職活動を行う留学生」などがそれにあたります。彼らは卒業後に就職活動を行うため、「就職活動」を特定活動として在留資格が与えられています。つまり、就労する先を探すためであり、就労することは許可されていません。ただ収入なしに日本で就職活動に長期間従事するのは難しいため、アルバイトなどに応募してくることもあるでしょう。その場合、資格外活動許可申請を法務局に行い、許可をもらう必要があります。

必要となる書類は以下の通りです。

  • ・資格外活動許可申請書
  • ・申請にかかる活動が分かる書類
  • ・在留カード
  • ・パスポートもしくは在留資格証明書
  • ・身分証明書(本人以外が申請をする場合、申請者の身分証明書)

申請は許可をもらう本人以外にも、雇用予定の企業職員などでも行うことができます。最終的な許可をもらうまでの審査期間は2週間から2ヶ月程度かかります。手数料などは不要です。

つまり、アルバイトなどに外国人留学生などが応募してきた場合は、まずは在留カードとパスポートを提示してもらい、在留資格や特定活動の指定書などを確認するようにしてください。その際に就労の可否などについても必ず確認し、必要に応じて資格外活動の許可を申請した上で雇用することが大切です。

これを怠ると不法就労で雇用側が逮捕されたり、処罰される可能性もあったりしますのでくれぐれも注意しましょう。

働く時間にも注意

外国人を雇用する場合、もう1つ注意したいのが働くことができる時間です。少しでも多く収入が欲しい外国人労働者は、何時間でも働けると主張するかもしれませんが制限が設けられていることもあります。

前述したような、ワーキング・ホリデーで特定活動の指定書を持っている外国人に関しては資格外活動の許可も不要であり、労働基準法の範囲内であれば、働く時間にも制限はありません。

しかし外国人留学生が資格外活動の許可を取っている場合は、週に28時間以内と規定されています。また夏休みや冬休みといった長期休暇であっても、1日8時間以内と定められています。これは就労があくまでも本業である勉学を妨げない範囲にとどめることが基本的な考えであるためです。

外国人留学生を雇う場合は、掛け持ちでアルバイトなどをしていないかも必ず確認してください。掛け持ち自体に問題はありませんが、労働時間は複数のバイトに従事した合計時間が週28時間以内である必要があるのです。

つまり、他社で週18時間働いている場合は、別のアルバイト先では週10時間しか働くことはできません。雇用した後も、随時シフトを確認し、週の規定時間が超過していないかを確認することが大切です。

これらの規定を守ることはあくまでも外国人に科せられたものですが、雇用者側が責任を問われることもあります。採用時はもちろんのこと細やかに確認をしておくことをおすすめします。

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まとめ

外国人を雇用したい場合は在留カードとパスポートを確認することは基本です。特定活動の指定書を持っている場合は、それだけで就労できるわけではありませんので、就労可否を確認し、必要であれば資格外活動の許可をもらうようにしましょう。正しい手順で進めればスキルの高い外国人を雇用し人材不足を解消することも可能です。