ワーキングホリデーの外国人を採用するときのポイントをご紹介

ワーキングホリデー制度を利用して、多くの若い外国人が来日しています。ワーキングホリデーは就労を目的としたビザではありませんが、日本での滞在費を稼ぐため、アルバイトやパート社員として働く人も少なくありません。 ここでは「ワーキングホリデーで来日している外国人を採用したい」と考えている企業の担当者に向けて、採用前に知っておきたい知識や注意点について紹介します。


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ワーキングホリデーとは


ワーキングホリデーとは、18~30歳(国によっては25歳まで)の青年が異国で文化を学び、余暇を過ごすための制度です。ワーキングホリデーでは、通常6カ月~1年程度(長くて2年程度)、外国に滞在することになります。

制度では、その間の滞在費や旅行費を就労することで補うことが認められています。

ワーキングホリデーの制度を利用して外国人が日本に入国する場合、入国を許可・証明する査証(ビザ)が必要です。査証の発行には年齢制限や制度利用回数の制限など、いくつかの条件があります。

ワーキングホリデー制度の利用は、日本と2国間協定を結んだ以下の27の国と地域で認められています。(2023年3月1日現在)

・カナダ
・オーストラリア
・ニュージーランド
・香港
・台湾
・韓国
・ドイツ
・ポーランド
・オーストリア
・フランス
・イギリス
・アイルランド
・アイスランド
・デンマーク
・スウェーデン
・ノルウェー
・リトアニア
・エストニア
・ハンガリー
・チェコ
・スロバキア
・オランダ
・ポルトガル
・スペイン
・チリ
・アルゼンチン
・ウルグアイ

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ワーキングホリデーの外国人を採用するときに知っておきたいこと

ワーキングホリデーの外国人を採用する場合、雇用主がいくつか事前に確認しておくべき点があります。

ここでは、ワーキングホリデーの在留資格で就労可能な業種とビザの確認方法、社会保険について解説します。

就労可能な業務

ワーキングホリデー制度は休暇が目的の制度ですが、滞在費や旅行費を得るための就労が認められています。たとえば、外国語を話す能力が活かせる観光地の飲食店や土産物店、観光案内、語学教師などの仕事が人気です。

雇用形態に制限はありませんが、短期滞在が一般的なワーキングホリデーの特性上、アルバイトやパート社員などの非正規雇用が多い傾向にあります。

また、就労時間においても特別な制限は設けられていないため、日本人労働者と同じように労働基準法の範囲内で働くことが可能です。

ただし、ワーキングホリデーでは以下の業種での就労は認められていません。

・風俗営業
キャバレーやバー、クラブ、パチンコ店、ゲームセンターなど

・性風俗営業

ビザの確認方法

ワーキングホリデーで来日している外国人を雇用する場合、本人の申し出通りワーキングホリデーの制度を利用して入国していることを確認しましょう。

万が一、採用した後に就労が認められない別の在留資格を持っていることや、不法滞在(オーバーステイ)などが判明すると、雇用主も「在留資格を確認していなかった」と過失が認定され、処罰の対象になる可能性があるからです。

ワーキングホリデーの在留資格は、在留カードとパスポートで確認することが可能です。

ワーキングホリデーの場合、在留カードには「特定活動」の記載があります。しかし、その記載だけではワーキングホリデーであることがわかりません。パスポートに添付されている指定書に「ワーキングホリデー」と書かれていることを併せて確認してください。

社会保険の加入の有無

ワーキングホリデーで来日している外国人を雇用する場合、在留資格の入国目的が就労ではなく休暇であるため、雇用保険に加入させる必要はありません。

しかし、厚生年金保険と健康保険については、在留資格は関係なく、条件を満たせば加入させる必要があります。具体的には、雇用する外国人の所定労働時間と労働日数が正社員の3/4以上となる場合です。また、正社員の4分の3未満であっても、週の所定労働時間が20時間以上、賃金が8万8,000円以上、など一定の要件を満たす方は、被保険者になります。

ただし、日本が「社会保障協定」を結んでいる国籍の外国人の場合、例外的に社会保険に加入させなくてもよいケースもあるため、協定内容を確認することが大切です。

[参考]適用事業所と被保険者|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
[参考]社会保障協定|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

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ワーキングホリデーの外国人を正規雇用する場合は?

一般的にワーキングホリデーでは1年程度の短期滞在者が多いため、就労形態もアルバイトやパート社員などの非正規雇用が多い傾向にあります。

しかし、ワーキングホリデーの制度そのものは雇用形態に規制がないため、事業主と外国人本人が望めば、正規雇用も可能です。そのような場合、問題となるのがワーキングホリデーの「特定活動」ビザです。

ここでは、ワーキングホリデーの外国人を正規雇用する場合の注意点について解説します。

在留資格を変更する

結論からいうと、ワーキングホリデーの在留資格「特定活動」は正規雇用に向きません。なぜなら、ワーキングホリデーでは日本への滞在可能期間がビザにより定められているため、それを超える期間会社に勤めることができないからです。

そのため、ワーキングホリデーの資格で来日している外国人が正社員として長く日本で働くには、在留資格を改める必要があります。その場合、方法は2つあります。

(1)「特定活動」から就労ビザへの在留資格変更許可申請を行う

日本にいながらにして在留資格変更の手続きを取るケースです。在留資格の変更には、変更したい資格の取得要件を満たしている必要があります。

たとえば日本でオフィスワーカーや技術者としての就労が認められる「技術・人文知識・国際業務」在留資格の取得を目指す場合「就労業務に関する専攻課程のある大学・専門学校を卒業していること」や「当該業務における一定期間以上の実務経験」などの条件が求められます。

(2)一旦帰国しビザを取得してから再入国する

国によっては、協定でワーキングホリデーからの在留資格変更が認められないケースもあります。そのような場合、日本国内でビザの切り替えができないため、一旦帰国し、新しい在留資格を得てから入国することが条件となります。

日本人と同等以上の報酬を払う

在留資格を変更し、日本で就労する場合、変更した在留資格のルールや規制を受けることになります。

たとえば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得した場合、単純職ではなく一般的な仕事への就労が目的のビザなので、ワーキングホリデーで認められていた単純労働の仕事に就くことはできなくなります。

これは「特定技能」や「介護」など、他の在留資格でも同様です。その在留資格に認められた業種・職種にしか就くことが出来ない点には注意が必要です。

また、労働条件にもルールがあります。代表的なものの1つが「外国人労働者に支払う報酬を日本人労働者と同等のものにする」というものです。

外国人を不当な低賃金で働かせることは法律違反になるため、賃金設定に問題がないよう気をつけましょう。

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まとめ

ワーキングホリデーは休暇を目的に他国に滞在できる在留資格です。滞在には生活費や旅行費などお金がかかるため、風俗営業など一部の業種を除いて国内での就労が認められています。

ワーキングホリデーの外国人を正社員として採用したい場合は、在留資格の変更を検討しましょう。資格変更の際は「変更先の資格が就労を希望する業種と合致していること」や雇用主が「日本人労働者と変わらない待遇を用意すること」などに気をつけてください。