従業員への低賃金が人材不足の原因になる理由

日本企業では、少子高齢化による人口減少に伴い、人材不足が深刻な問題となっています。しかし、人材不足に陥る原因は人口問題であると断言できない場合もあります。なぜなら、人口問題以外の人材不足の要因のひとつには低賃金雇用が挙げられるからです。 人材不足を解消するには低賃金雇用が蔓延している現状にも、目を向ける必要があるでしょう。ここでは、低賃金雇用が招く人材不足の現状やリスク、人材不足解消に繋がる生産性を向上させる方法について紹介します。


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低賃金が人材不足を招く原因に?!

企業では、経営利益を確保するために人件費の削減を行っている場合も少なくありません。しかし、過剰な人件費の削減が、人材不足を招く要因となっている可能性があります。

以下では、低賃金雇用の現状やなぜ人材不足に繋がるのかについてお伝えします。

低賃金が雇用のミスマッチを生み出している

企業と労働者間のミスマッチを生み出している要因として、低賃金での雇用が大きく関係しています。従業員が最低限の生活を送れないほどの低賃金での雇用が、人材不足の悪循環を招いている可能性があります。

この場合、多くは特別な資格を持っていない人や業務の経験値が低い人材だけが低賃金なわけではありません。有能な技術や才能を持った人も、低賃金で労働をしている現状があります。

たとえば、派遣社員・非正規雇用者問題はいまなお続いており、2022年度の総務省統計局の調査によると、役員を除く雇用者は5,689万人いる中で、非正規雇用者は約2,101万人にのぼります。

つまり、雇用者全体の約37%が非正規雇用であることがわかります。正規雇用者と比べ、非正規雇用者の平均年収は約7割しかありません。

[参照]総務省統計局 労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均
[参照]令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

上述したような、非正規雇用者の中には有能な知識や技術、才能を持った人材も含まれており、能力と賃金が見合った環境にない可能性があります。

労働力を安く買うという考えは間違い

日本企業では、人件費を削減することで安い労働力で事業利益を得るという経営を行っている場合が多くあります。しかし、労働者一人あたりの業務負担が増加する上に、適切な賃金が支払われていない場合、モチベーションの低下を招く恐れがあります。

つまり、労働者一人一人の生産性が向上せず、結果的に企業全体の事業成長や利益アップを阻害してしまう要因になりえます。

代わりになる人材が多くいるなどの理由で、非正規労働者を低賃金で雇用するのは、離職率の上昇を招き、慢性的な人手不足に繋がりやすくなります。

入職者が減ることを人口減少によるものとして結びつけ、安易に低賃金雇用を続けていては、人材不足は改善しないでしょう。低賃金雇用者を増やすのではなく、労働者のパフォーマンスを最大限に引き出すための労働環境の整備を行い、生産性向上に繋げる必要があります。

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低賃金で人を雇い続けるリスク

低賃金で労働者を雇い続けるのは、企業にとってメリットばかりではありません。ここでは、低賃金雇用が招く企業側のリスク要因について紹介します。

倒産の危険性

少子高齢化による人口減少が、日本企業全体に人材不足を及ぼしている現状は否定できません。それは競合他社においても同様であるため、より条件のいい企業へ転職しやすい状況であるといえるしょう。

売り手市場と呼ばれる近年では、人材確保の競争力が低い企業は、倒産というリスクに直面します。

低賃金雇用を続けていると、優秀な人材が他社へ流れ、従業員の業務負担が増加するため連鎖的な離職が起こる可能性も。結果的に人材確保ができない状態が続き、倒産に追い込まれることもあるでしょう。

特に地方では、賃金の高い地域へ労働者が流れてしまい、慢性的な人材不足に陥るリスクが高くなります。

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生産性の向上が人材不足解消のカギとなる

都市部の大企業と比べ、地方の中小企業では賃金を引き上げることが容易ではない場合もあるでしょう。ここでは中小企業でも可能な、人材不足解消に役立つ、生産性を向上する方法について紹介します。

生産性の向上=労働環境の改善

生産性の向上には、労働環境の改善が欠かせません。今いる従業員の働きやすい環境づくりを積極的に行うことで、従業員一人あたりの生産性を向上させることが可能になります。

リモートワークやフレックスタイム制の導入、業務負担の軽減など、方法は多岐にわたります。生産性が向上すれば、ひとつの業務にかかる人員や時間が減り、結果的に人件費を削減できていることになります。

削減できた人件費を従業員の賃金アップや設備投資などにあてることができ、さらなる労働環境の改善を行うことが可能になります。従業員の離職率低下にもつながるでしょう。

無駄な作業を失くして効率化を図る

生産性の向上には、無駄の削減による業務の効率化も有効な手段です。ITツールの導入による勤怠状況や目標の一括管理、社内SNSなどで報告・連絡の効率化を行う企業も多くあります。

ノー残業デーの設定や労働時間の見直しで、長時間労働を防ぐ工夫も大切です。従業員一人ひとりが就業時間内に業務を完了させるにはどうすればよいか?と考え、効率的に働く意識を持つようになるでしょう。

また、人材の確保が難しい場合、即戦力となりうる外国人労働者を雇用する方法もあります。特に人材不足が蔓延しているサービス業や小売業などは外国人の採用を検討してみましょう。今後、海外からの観光客も増えて、より一層外国人雇用の必要性が高まるでしょう。

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まとめ

人材不足は、人口減少による労働者そのものの減少だけが原因ではありません。低賃金雇用による労働環境の悪化や、人材確保の競争力低下も要因のひとつとして、対策を考えていく必要があります。

人件費の削減に向けて、会社全体の業務効率化や職場環境の改善を行い、生産性を向上させる工夫を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

また、日本で働きたいという優秀な外国人材の雇用も一つの選択肢と言えるでしょう。