人手不足の原因は少子高齢化?今後の見通しと企業がやるべき対策

コロナ禍を過ぎ、2023年の平均有効求人倍率は1.28倍にまで上がってきました。求人が増加したことで、売り手有利の採用市場となり、多くの企業では深刻な人手不足に陥っているケースも少なくありません。 人材を確保できずに、人手不足による倒産も年々増加しています。今回は、企業が人手不足になる原因や今後の見通しと対策、有効な解決策について探っていきましょう。


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企業が人手不足になる原因

近年、とくに中小企業を中心として人手不足に悩んでいます。求人広告を掲載しても、募集が集まらないといったケースも多くみられるようです。さらに優秀な人材を確保するのは、至難の業になりつつあります。

企業の人手不足の背景には、どういった原因があるのでしょうか?

少子高齢化にともない生産年齢人口も減少

出生率の低迷から、人口減少に歯止めが利かず、比例して生産年齢人口も減少しています。

わが国では1995年の8,716万人をピークに、生産年齢人口は減少の一途をたどり、2023年現在では7,400万人まで減少。さらに2060年には、4,418万人まで減少すると予想されています。

さらに高齢化から超高齢化社会を迎え、2023年現在65歳以上が人口に占める割合は29%。今後も高齢化率は上昇していくものと考えられています。

人口減少や高齢化にともなって、働く世代の人口が減っているため、さまざまな企業の人材確保に影響を与えているのが現状です。

[参考]政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)

離職率の高さ

中小企業や小規模事業では、大企業に比べて慢性的に離職率が高いことも人手不足の原因です。

人間関係や業務内容、給与待遇面での不満などがおもな離職の原因となっており、新卒、中途いずれも入社後3年以内の離職率は3割を超えています。

とくに宿泊業、飲食業、建設業や運輸業といった業界は、労働環境や負担の重さから、非常に高い離職率が問題となっており、人材の確保は喫緊の課題といえるでしょう。

人材の流動化

近年では、終身雇用制度は崩壊し、1つの会社で一生働き続ける人の方が少なくなり、柔軟にさまざまな企業を渡り歩く「人材の流動化」も一般的になりました。

その結果、企業へ労働者が定着しにくく、慢性的な人手不足に陥るケースが増えています。

働く側はよりよい職場を求めて転職しやすくなった一方で、転職を繰り返すケースも多くみられるようになり、企業への定着率が低くなっています。

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人手不足の今後の見通しと対策

わが国の少子高齢化や人口減少は依然として続くと考えられ、労働人口も減り続けるのは明らかです。有効求人倍率もさらに上昇し、若く優秀な人材をめぐる争奪戦は、大きく繰り広げられることになるでしょう。

企業がさらなる人手不足に陥ってしまう前に、有効な対策を講じることが重要です。

まずおこなうべきは、現在在籍している社員の離職率を下げて定着をはかり、積極的に新規採用をおこなうこと。そのためには、魅力的な職場環境の整備が必須条件です。

給与面の改善

離職の大きな原因のひとつが賃金の安さであり、離職を避ける職場環境づくりには給与面の見直しは必須といえます。また同じ業務内容なら正規雇用でも非正規雇用でも給与を同じとする「同一労働同一賃金」の徹底も重要です。

社会的に深刻な人手不足であるにもかかわらず、賃金の上昇は鈍く、従来と同じような待遇で求人している企業も少なくありません。

労働者の視点では、「やりがい」や「キャリアアップ」ばかりを全面に押し出す、「やりがい搾取」と受け取られている場合もあるでしょう。

とはいえ、企業側としてもいきなり大幅な給与アップは難しいものです。まずは基本的な給与の支払いをきちんとおこなう、サービス残業を禁止する、正社員だけではなくパートやアルバイトにも昇給の機会を与えるなど、徐々に取り組んでいきましょう。

働きやすい環境づくり

さらに取り組むべきは、労働環境を改善し、働きやすい職場の実現です。ワークライフバランスの重要さが叫ばれて久しいものの、実際には働く側の負担がまだまだ大きいのが現状です。

長時間勤務やサービス残業などが常態化しているなら、早急に改善しましょう。さらに有給休暇をとれない、シフトが自由に調整できない、などは過酷な労働環境であるということを企業側が認識し、改める必要があります。

また、パワハラやセクハラ、マタハラなどに関するルールの策定なども、労働環境の改善には欠かせません。

まずは、現在の労働環境の実態を把握することからはじめ、働く側が魅力的に感じる職場を実現することが重要です。

さまざまなワークスタイルを取り入れる

価値観やライフスタイルの多様化にともない、もっと自由な働き方を望む人も増えています。時間や場所、雇用形態にとらわれずに働きたいと考えている人は少なくありません。

人手不足が深刻化するなか、さまざまな年代や属性の人材が活躍できる職場を実現することは非常に効果的です。とくに子育てや介護と両立しやすい働き方は、多くの企業にとって取り組むべき課題といえるでしょう。

また時短勤務や兼業、フレックス、リモートワークなど、柔軟な働き方を取り入れることで育児や介護などでの離職を防げ、人材の長期的な育成にもつながります。

研修など教育体制を整える

リクルートマネジメントソリューションズが発表した「2023年度の新入社員意識調査」を見ると、仕事をするうえで重視したいことのトップ1は「成長」となっています。

[参考]【調査発表】新入社員意識調査2023|プレスリリース| 人材育成・研修のリクルートマネジメントソリューションズ (recruit-ms.co.jp)

成長を実感するためには、上司や先輩など周りの人のフィードバック力や褒め方・叱り方が大きく影響します。

また、本人も、1年に1回など、研修の機会や上司との面談で、自身の成長の振り返りをすることが有効です。

そのため、若手を育てるリーダー向けのコミュニケーション研修や、若手向けの自身のありたい姿を考える研修など、社員教育の機会を作ることが大切になってきます。

近年は働く側も、研修体制がきちんとあり、社員の成長に投資をしてくれる会社を求めています。

また、メンタルヘルスやハラスメント関連の研修も適時行うことで、従業員のメンタルダウンの防止にもつながるので、体調不良による離職・休職のリスクを低減できます。

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人手不足を解決するには外国人採用も効果的

人手不足の解消には、魅力的な職場環境を作ることも重要ですが、人口減少が進むわが国では海外の人材に目を向けるのもひとつの手段です。

日本に住む外国人は年々増えており、仕事を求めてやってくる外国人も少なくありません。

また、外国人の採用は単に労働力の確保としてだけではなく、企業にとって次のようなさまざまなメリットがあります。

若い労働力を確保しやすい

日本で働きたいと考えている外国人には若者が多いため、採用枠を外国人まで拡大するだけで、若い労働力が確保しやすくなります。

特に東南アジアの国々などでは、日本とは逆に若い世代の人口割合が高くなっています。彼らの多くは母国へ仕送りをしており、日本で稼ぎたいというハングリー精神を持っている人も多くいます。当初こそ言語や文化の違いが原因で戸惑うことはあるかもしれませんが、若さでカバーできる部分も多く、伸びしろにも期待ができるでしょう。

日本の若者は大企業志向である場合も多く、中小企業や小規模事業での採用活動は厳しいケースも多くみられます。

若い人材を求めるなら、外国人労働者の確保は企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

社内の雰囲気を活性化

社内に外国人がひとり増えるだけで、社内の雰囲気はガラリと変わり、活性化やマンネリムードの打破にもにつながります。全体的な意識の向上にもつながり、高いモチベーションで働く外国人に刺激をもらう既存の社員も多いはずです。

また、異なる環境や視点からまったく違ったアイディアが生まれ、新たな開発やシステムにつながることも少なくないでしょう。

他にも、異文化の交流やコミュニケーションで社内が明るくなるなど、職場への貢献度は決して低いものではありません。

グローバル化、海外進出への対応

海外への進出を考えている企業であれば、その地域や国の出身者の採用は非常に効果的です。

現地の言葉はもちろん、文化やマナーなど活きた情報を手に入れることができ、進出の際の大きな足がかりとなるでしょう。相手国との架け橋となり、スムーズなビジネス展開が叶うはずです。

また、今後社会のさらなるグローバル化は必須。企業においても、対応できていなければ、時代の流れに取り残されてしまうことも考えられます。外国人労働者の採用は、グローバル化の一環としても非常に有効です。

職場でも社員で英会話の勉強会をおこなう、異文化について理解を深めるなど、外国人労働者を受け入れるための土台を作ることが重要となってくるでしょう。

 

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まとめ

少子高齢化や人口減少などがおもな原因となり、企業の人手不足は非常に深刻化しつつあります。

まずできる対策は、職場環境や給与について見直し、現在雇用している社員やスタッフの離職率を下げること。魅力的な職場環境が実現すれば、離職する社員やスタッフも減り、優秀な人材の確保にもつながります。

また、外国人の採用も有効です。単なる労働力の確保としてだけではなく、企業の大きな戦力として活躍してくれる可能性も非常に高いでしょう。人手不足だけではなく、企業が抱える課題も解決に導いてくれるかもしれません。

従来の方法にこだわらず、さまざまな方法で人手不足の悩みへアプローチしていきましょう。