外国人を雇用する際に気を付けるべき”届出”と”助成金”について

少子高齢化が深刻化する現代の日本社会にとって、企業が労働者を確保できるか否かは死活問題までに発展しています。そのため、人材不足を回避するために、日本企業での外国人労働者の雇用は年々増えてきています。 そんな中、中国人・外国人労働者の雇用には、「外国人雇用状況の届出」の提出が法律によって定められました。 手続きにかかる手間や、文化・習慣の違いから遠慮されがちな外国人労働者の雇用ですが、いくつかの助成金を受けるための対象にもなっています。 中国人のみならず外国人の積極的な雇用は、企業を支える人材へと繋がっていきます。今回は、外国人労働者を採用する際の届け出と助成金についてご紹介します。


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外国人を雇用するときの注意点

外国人を雇用する際には、すべての事業主は「外国人雇用状況の届出」を提出しなければいけません。離職の際にも同様の届出が必要です。

雇用状況の届出について

【外国人・中国人雇用状況の届出】

外国人労働者を雇用する事業主は「外国人雇用状況の届出」の提出が義務付けられています。

外国人労働者の雇用状況の把握や再就職支援の努力義務を目的とし、厚生労働省令雇用対策法第二十八条に定めたもので、平成19年10月1日より執行されています。

届け出る内容は、氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍、住所ほか厚生労働省が適切とみなした質問などです。

届出の方法は、オンラインまたはハローワークを通じて厚生労働大臣に提出します。提出漏れ・偽装は、罰金30万円以下が科されます。

留学生や主婦などのアルバイトのケースにおいても同届出が必須です。日本での在留資格が「留学」ならびに「家族滞在」である場合、就労するためには「資格外活動許可」が必要となるため注意が必要です。

外国人派遣社員の場合は、派遣元が届出を提出しなければいけません。登録型派遣のケースでは、派遣先が変更になる度に、雇入れの届出が必要となります。

[参照]厚生労働省・「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です!

雇用状況の届出の対象となる外国人

日本の国籍を有さない外国人の雇用には、「外国人雇用状況の届出」の提出が必要ですが、「特別永住者」あるいは在留資格が「外交」「公用」の外国人労働者の場合は例外です。

日本人と婚姻関係のある外国人の場合は、在留資格があったとしても、「外国人雇用状況の届出」の提出義務が発生します。

しかし、在留外国人のなかには、名前や言語から外国人であると判断ができないこともあります。外国人と気付かずに雇用してしまった場合は、外国人であるかどうかの確認不足や届出未提出により罰金が科されることはありません。

[参照]厚生労働省:外国人雇用状況届出Q&A

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外国人を雇用するメリットとデメリット

外国人雇用状況の届出をベースとした厚生省労働省の統計により、2012年以降は外国人労働者の数は急激に増加し、2020年には約172万人(令和2年10月末現在)。多くの企業が外国人労働者のマンパワーに頼らなければならない状態に直面しています。

雇用するメリットは?

外国人や近年増加している中国人を雇用する最大のメリットは若い労働力の確保でしょう。

海外から来日した外国人労働者の多くが向上心があり、働くことに意欲的です。さまざまな国の異なる仕事への考え方や姿勢が、社内の雰囲気を変え、社員の意識改革への強力な手段ともなりえます。

日本人とは違った、発想やアイデアを産み出す可能性も期待できます。組織にとって新しい風となり、企業を一新することにもつながります。

海外への進出を計画しているのであれば、日本と現地の双方を熟知している優秀な人材の確保は最重要要素のひとつ。

言葉による意思疎通も重要ですが、双方の国における習慣や文化の違いにも精通している人材の雇用は、市場調査、渡航、現地の習慣や習俗のレクチャーなどさまざまな局面において、事業拡大へのキーとなりえます。

雇用するデメリットと対策は?

単一民族である日本において、異文化圏で生まれ育った外国人の雇用の受け入れには、まだまだ抵抗があります。

デメリット1
外国人労働者には、日本社会においては当たり前・常識といったことがまったく通じないことや、まったく違う意味合いにとられてしまうこともあります。異文化で生まれ育った人材の雇用は、新風にもなりえますが、逆風になる可能性も少なくありません。

デメリット1への対策
日本人と外国人の文化や習慣の違いを知ってもらうことに加え、相手の文化や習慣も知るように歩み寄ることが大事です。考え方や習慣の違いを熟知し、尊重することが重要となります。

デメリット2
日本人同士であれば、はっきりと伝える必要がないことや曖昧にした方が都合のよい状況であっても、微妙なニュアンスが通じず、コミュニケーションがスムーズにいかないこともあります。
習慣や背景の違う外国人労働者にとって、日本人の言動が相応でない場合、誤解を受けることや差別ととられる可能性も否定できません。

デメリット2への対策
はっきりと正確に、誤解が起きないように物事を伝え、コミュニケーション不足とならないように丁寧な対応をこころがけましょう。誤解が生じていることが発覚したのであれば、前向きな話し合いをするなどの努力を怠らないことが大事です。

デメリット3
秀でた有能な外国人労働者が多く雇用されることにより、日本人求職者の就労機会が失われてしまいます。

デメリット3への対策
外国人労働者を積極的に雇用する理由は、優秀な人材確保や人材不足を補うための手段だけではありません。

非製造業の事業主は、外国人労働者を雇用した理由に「特殊な技能・能力、高度な技術があったから」「過去のキャリアがすぐれていたから」という前向きな回答をしており、優秀な人材が、たまたま外国人であったということであり、能力ベースの公平な就労機会の提供が感じられます。

しかし、製造業においては「海外ビジネスの展開をにらんで」という戦略的な理由もみられるものの、「賃金などの費用の安さ」「日本人を採用することができなかったから」という回答も多くみられます。

このように外国人への賃金は日本人の賃金よりも安く済むという認識のもとに、積極的に外国人労働者を雇用する事業主が多くいるという事実は否定できません。

国籍による賃金の差別化は法律で「禁止]されています。雇用機会均等と同時に、賃金・キャリアパス制度も平等にするなどの企業努力を推進することも対策のひとつです。

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外国人を雇用した時活用できる助成金

外国人を雇用することで、事業主は助成金を受けることができます。

助成金とは?補助金とは?

双方とも返済不要な資金ですが、一言で表すのであれば、省庁の管轄が違います。

【助成金】

厚生労働省による返済不要の援助資金。雇用保険に加入している企業へ提供されます。

対象は以下の通り:

・人材採用から採用後の定着に関わるもの

・障がい者や高齢者の雇用促進

・就業者のキャリアアップ

予算がある限り募集は続く仕組みになっており、社会情勢に応じて制度が変わります。頻繁に変更になるため、常にアンテナを張ることが大切です。

[参照]厚生労働省:雇用関係助成金

【補助金】

補助金とは、経済産業省や農林水産省が、国の政策や産業育成などを目的として交付する資金です。

ほとんどの補助金は公募によるもので、公募期間は約1ヶ月と短く、さらに通知があるわけではないため、自らこまめにチェックしなければいけません。

全国展開する寿司チェーン「すしざんまい(株式会社喜代村)」は、「海外開拓」「省エネルギー」「雇用」における公的助成金制度を活用して事業を拡大した成功例です。

外国人雇用で適用の可能性があるとされる助成金

【雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金を含む)】

現在は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者に、休業手当などの一部が助成されます。もちろん外国人も休業手当を受ける対象者となります。

業務活動縮小のための一般的な対策の一つは人件費削減です。雇用主は、労働者を解雇、一時的に休業、あるいは教育訓練等に出向させるなどして、赤字や倒産を避けようと試みます。

従業員を解雇せずに、休業あるいは教育訓練を斡旋するなど、従業員をサポートする中小業の事業主を対象として雇用調整助成金は提供されます。

[参照]厚生労働省:雇用調整助成金

この他にも、いくつか適用の可能性のある助成金がありますので、こちらの記事で紹介しています。「外国人を採用すると助成金が出る?外国人雇用における助成金について」

 

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まとめ

少子高齢化を背景に、近年、外国人労働者のマンパワーに依存する事業主が増えています。

そのため、不法滞在・不法就労といった違法行為や、就労機会不均等や賃金不均等への問題も浮上しています。

厚生労働省では「外国人雇用状況の届出」の提出を法律で定め、事業主に対して、雇用する外国人労働者が不法滞在あるいは不法就労者か否かの確認を実施することを義務付けています。

加えて、外国人労働者が国籍により差別を受けていないか、適切な就労条件のもとに起用されているかなどの調査も同時に行っています。

外国人労働者も日本国籍保有者と同様の立場であり、休業手当や教育訓練のための助成金を受けることのできる対象者です。国籍関係なく、平等で適切な労働条件のもとに雇用することが法律で定められています。

企業の発展のために、外国人の雇用を検討されてみてはいかがでしょうか。