中国人の健康保険加入について知っておきたい知識と手続き方法

近年、外国人労働者は増加の一途をたどっています。中でも多いのがベトナム人や中国人労働者です。中国語対応の即戦力となるため、新たな戦力として中国人労働者を雇い入れたいと考えている企業が増えてきています。 日本で働く場合は外国人も、社会保険に加入する必要があります。健康保険は加入者にとってメリットの大きい制度なので、日本人自らが理解を示し、中国人労働者にも積極的に利点を伝えておくとよいでしょう。 ここでは、中国人労働者の方の保険加入にあたって、必要な知識や手続きについてご紹介します。


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外国人の健康保険加入の義務について

日本で働く以上、外国人を雇用する企業は、健康保険に加入させる義務があります。健康保険に未加入のまま外国人を働かせてしまうと、罰せられることがあるので注意が必要です。

外国人労働者は、社会保険に加入する必要はある?

前述したとおり、日本で決められた雇用形態の条件に当てはまれば、労働者は社会保険への加入が義務化されています。外国人労働者もその例外ではありません。

社会保険の種類は「労災保険」「雇用保険」「健康保険」及び、「厚生年金」です。労災保険と雇用保険は雇い入れ時に加入する義務があります。

事業主は雇い入れた時点で、採用者の氏名・生年月日・性別・住所・年金番号等を確認し、ハローワークへ届け出る必要があります。基礎年金番号を持っていない外国籍の労働者の場合は、住民票上の住所を確認してください。

アルバイトやパートタイマーでも、一般社員と比べた労働時間、もしくは労働日数が4分の3以上になる場合は保険加入が義務です。

加入義務化の背景には、偽名による健康保険被保険者証の不正取得を防止したい年金機構のねらいがあります。できるだけ正確な情報を届け出るように心がけましょう。

万一、対象となる外国人が社会保険に未加入であることが発覚した場合、追徴金または罰則が課せられます。

また、一部加入が義務化されていない保険もあるので、判断に迷うこともあるかもしれません。
社会保険の加入で悩んだときは、日本年金機構に相談しましょう。

健康保険について

2012年7月9日から、外国籍でも住民基本台帳制度の対象になりました。原則、3カ月以上日本に滞在する予定のある外国人は国民健康保険に加入する必要があります。

法人企業に勤めている場合は加入が義務です。雇用主がいかなる形態の法人であっても加入が免除されることはないので気をつけてください。

株式会社・合同会社・有限会社、すべて同じ扱いになります。たとえ従業員が1人だけであっても、法人である以上は健康保険に加入しなければいけません。法人化していない個人事業主の場合でも、5人以上の雇用者がいれば加入が必須です。

パートタイマーやアルバイトでも、条件を満たした場合は加入が義務化されます。1週間の労働時間、あるいは1カ月の労働日数が一般社員の4分の3以上になる場合は、健康保険の加入対象者になります。

なお、資格外活動が認められるのは、概ね週28時間までです。資格外活動の外国人を週28時間以上働かせた場合、不法就労助長罪に問われる可能性があるので注意してください。

[参照]厚生労働省・外国人を雇用する事業主の方へ 外国人雇用はルールを守って適正に

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健康保険に加入するメリットと保険料

外国人労働者は、制度の具体的なメリットを知りたがる傾向にあります。保険料を支払う以上、健康保険によって得られる恩恵を把握したいと考えるのです。ここでは外国人が健康保険に加入するメリットと、保険料の支払い形態をご紹介します。

外国人労働者が健康保険に加入するメリット

健康保険に加入するメリットは、労働者本人がケガや病気をしたときに備えられる点にあります。健康保険に加入していることは、外国人労働者にとっても大きな安心につながるはずです。

以前は海外に住んでいる親族を、日本で加入する健康保険の被扶養家族として扱うこともできましたが、令和2年4月に施行された改正法により、被扶養者の認定にあたって、日本国内に住所を有する(住民票がある)ことが要件として追加されました。

ただし、国内移住要件の例外として、留学生や海外赴任に同行する家族など、日本国内に生活の基盤があると認められる方に関しては、必要書類を申請することで、被扶養者の認定が可能です。

今後外国人労働者を雇用する際には、被扶養者認定のルール変更に注意しましょう。

[参照]従業員の家族が海外居住の場合の手続き|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

健康保険の保険料について

健康保険の保険料は、雇用主と労働者が折半します。保険料率は都道府県ごとに異なるので、事前にチェックしておくとよいでしょう。

保険料を計算するには、労働者に支払う月額の賃金をもとに「標準報酬月額」を割り出す必要があります。標準報酬月額とは、毎月の給料など、区切りのよいところで区分した報酬額の平均値を表すものです。雇用者は、標準報酬月額の計算式を把握しておいてください。

また、健康保険の保険料は1年ごとに改定されます。そのため、毎月最新の計算式を用いて保険料額を控除・納付してください。古い計算式を用いると、控除・給付額に差が出てしまうので注意が必要です。

なお、賞与については、年3回以内の回数で支払われるものを対象に、月額の健康保険料とは別に納付しなければなりません。こちらも、健康保険料を計算する際の参考にしてください。

[参照]全国健康保険協会・費用の負担

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はじめて中国人を採用する時の注意点

はじめて中国人を採用する際には、さまざまな手続きが必要になります。

また、中国人の特徴を知っておかないと、トラブルを誘発することにもなりかねません。ここでは中国人を採用するための注意点をまとめました。

健康保険の加入手続き

社会保険である健康保険に加入するには、まず「雇用保険被保険者資格取得届」に必要な事項を記入し提出する必要があります。「雇用保険被保険者資格取得届」の1〜16までの項目は日本人と同じです。

外国人労働者の場合は、さらに17~23に国籍・地域、在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無を記入します。

記入する内容は、外国人労働者から口頭で聞くのではなく、在留カードを確認するといいでしょう。雇い入れ日の翌月10日までに管轄のハローワークに届け出てください。

また、雇用保険の加入対象外の労働者を雇い入れた場合は、「外国人雇用状況届出書」をハローワークに届け出る必要があります。

外国人雇用状況届出を怠った場合は、指導・勧告の対象になってしまうので注意が必要です。具体的には、30万円以下の罰金が課せられることがあります。

アルバイトや留学生、ワーキングホリデーといった、雇用保険の加入対象外である労働者を雇用した場合は気をつけましょう。

[参照]厚生労働省・雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!

はじめて中国人を採用する際に

義務である以上、中国人労働者にも健康保険に加入してもらう必要があります。しかし、保険料を支払ってもらう関係上、きちんとメリットを伝えておくことがトラブル回避につながります。

中国人は物事をうやむやにせず、明確な答えを求める傾向が強いようです。そのため、制度の仕組みや利点を正しく伝えられないと、加入に納得してもらえないかもしれません。

健康保険に加入することで外国人労働者が受けられる恩恵は大きいので、その点を明確に示すとよいでしょう。

社会保険の中には、加入が免除されるものもあります。中国人労働者の雇用形態によって加入すべき社会保険が変わるので、条件は事前にしっかり確認しておきましょう。わからないことがあるときは、日本年金機構に相談して回答を得るようにしましょう。

また、職場に適した人財を探したいときや、外国人雇用による社会保険の手続きなど困りごとが発生した時は、中国人採用に特化した人財派遣会社を利用するのもおすすめです。専門のコンサルタントが、企業の相談ごとに対して事例をもとにアドバイスを行ってくれます。

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まとめ

中国人の健康保険加入についてご紹介しました。規則を知らないと労働者との間でトラブルが生じやすいうえ、企業が罰則の対象となってしまうこともあり得ます。

外国人採用においては、必要な知識を身につけたうえで正しく雇用することが大切です。