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Interview
インタビュー

聖心女子大学 シスター 鈴木 秀子

プロフィール

東京大学人文科学研究科博士課程修了。文学博士。
フランス、イタリアに留学。ハワイ大学、スタンフォード大学で教鞭をとる。
聖心女子大学教授(日本近代文学)を経て、国際コミュニオン学会名誉会長。
聖心女子大学キリスト教文化研究所研究員・聖心会会員。文学療法、ゲシュタルト・セラピー。日本にはじめてエニアグラムを紹介。
全国および海外からの招聘、要望に応えて、「人生の意味」を聴衆とともに考える講演会、ワークショップで、さまざまな指導に当たっている。
 
【主な著書】
『世界でたったひとりの自分を大切にする – 聖心会シスターが贈る大きな愛のことば』(文響社 2018年)
『今、目の前のことに心を込めなさい』(海竜社 2017年)
『あの世のこと―死の意味と命の輝き』(宝島社 2017年)
『9つの性格 エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係』(PHP研究所 2004年)
『死にゆく者からの言葉』(文藝春秋 1996年)
などほか多数

  • 日本にエニアグラムを初めて紹介しただけでなく、講演会やワークショップ、様々なコミュニティでご活躍している鈴木秀子さん。そんな鈴木さんに「働くということ」をテーマに、これからの社会の生き方や若者へ伝えたいメッセージなどをお伺い致しました。

  • いきいきと生きる秘訣

    笹川:鈴木先生、本日はありがとうございます。私は85歳まで生涯現役で働きたいと思っています。そのさらに先、100歳まで元気に活き活きと働く秘訣や心得はありますか?

    鈴木:小さなことを続けることですね。どんなに大きな目標を立てても、人間の意志は弱いですから続けられません。小さなことを毎日続けることがいいのではないでしょうか。

    笹川:若い人によく聞かれるのですが、目の前のことを一生懸命やるとして、大きなゴール(目標)は見つけなくても良いのですか?

    鈴木:そうですね。大きなゴールと結びつけなければいけません。私たちは修道会に入っていますが、「何のために入っていますか?」と聞かれたら、「神様の愛を広げるため」という大きな目標があります。この大きな目標と、今私が日々している小さなことが結びついていないといけませんから、時々自分で、その大きな目標と小さな取り組みが結びついているかをチェックすることが大切ですね。

  • 少子高齢化社会の生き方

    笹川:日本は少子高齢化で若い人がどんどん減って、社会がガラッと変わってきていますが、この時代の生き方というのは何かあるのでしょうか?

    鈴木:どの時代でも、私たちは神様に命を与えられています。命というのは人間を越える大いなる存在ですから、生かされているということが尊いことであると自覚することです。外からどう見られるか、どういうことが自分にできるか、どうしたら自分が美しく見られるかというのは、外の条件によって変わります。自分の中に命を与えられ続けていることを感謝し、その命を大切にしていくということはどの人も等しくするべきことなのだと思います。つまり人間の尊厳を大切にするということですね。どういう風に生きたらいいのかは人それぞれです。高齢者には高齢者の、若い人には若い人の生き方があります。価値観もどんどん変わっていきますから、若い人が何を望んでいるのかを見極めて、適切な援助をするのが大人の役割ではないかと思います。

    笹川:確かに、若い人を助けるのが大人の役割ですね。

    鈴木:若い人も自分の本音を外へ出していくことですね。自分を満たしてくれるのは外の条件ではないと思います。ですから、自分から学んでいく必要がありますね。

  • 働くとは

    笹川:鈴木先生にとって、働くということの定義はなんでしょうか?
     
    鈴木:人間が常に問いかけられている根源的な問題が3つあります。「何のために生まれてきましたか」「何のために生きていますか」「何のために働いていますか」の3つです。日本の人口が減っていく、働く人がいなくなる中で、働くことがどんなに大切か自覚せざるをえない事態になっているではないですか。人間がどうなったら幸せか、何が幸せかというと、心の満足度が高い時、心が満たされている時が一番幸せだと思うのです。だから、何のために働くかというと、今日与えられた仕事を通して、最終的には自分の心の幸福度を上げることだと思います。自分の与えられた仕事を忠実にこなして、それが、何らかのかたちで影響を及ぼしていく。周りの人の幸福度も高くなっていく。人間の幸せというのは、一人一人が幸福度を高めていく、幸せだと感じる感度を高めていくことです。仕事ができることに感謝をして、周りの人の助けを借りながら、いい仕事をし続けることで社会にわずかでも影響を与えているという喜びを味わう。ある程度の幸福度を高めながら生き続けるために、仕事は与えられている「ありがたい」ものだと思います。
     
    笹川:深いお考えです。日本人の幸福度は世界の中でもとても低いですが、先生はどのように考えていますか?
     
    鈴木:日本人はみんなと一緒でなければ幸せではない、という考えがあるではありませんか。周りに振り回されず、自分は幸福を感じる力があると自信を持つということが大切ですね。「感謝」というのはとても幸福度を育てます。私は、寝る前に今日起こったこと3つに感謝をして寝るのですが、感謝する習慣を身に付けると、幸福度は上がっていくのではないでしょうか。

  • 働くことで得られるもの

    笹川:先生が考える、働くことで得られるものは何でしょうか?

    鈴木:名誉があってお金があって「どうして嬉しいのか」というと、自分が満足しているからなんですね。満足して心が穏やかな人は、人に何かしたくなるのです。仕事は、最終的には自分の幸福度を上げることになるけれど、その前に、自分が全力で働いて社会に何かしらでつながっていることで、他人の役に立っているという自覚を感じられますね。

    笹川:心を穏やかに保つことで、自分にゆとりができ、他人に何かをすることができるということですね。とても素敵だと思います。

  • 若者へのメッセージ

    笹川:最後に、若い人へメッセージをお願いします!

    鈴木:例えば、オリンピック選手はあの一瞬のために集中して、報われないかもしれないけれど必死で練習をします。若さとは、そういう情熱だと思います。与えられた仕事を一生懸命やる。その成果が喜びになる。それは、すぐには自分に返ってこないけれど、小さなことが社会の深いところに、何らかのかたちでつながっているんだと自覚して仕事に打ち込んでほしいです。そして、仕事ができることに感謝してほしいです。社会に貢献できていることに感謝しながら、死ぬまで自分を育ててください。

    笹川:鈴木先生のお話から、素敵な言葉をいくつも聞くことができました!本日は、お忙しいところありがとうございました。

  • インタビューを終えて笹川より

    私が最も敬愛する、シスター鈴木秀子先生。出会いとその後のご縁に感謝いっぱいです。
    先生の3日間集中セミナーで、人が生まれ変わったように変貌する瞬間を目の当たりにし、その時の感動が目に焼き付いています。
     
    あー、人はどんな境遇にあろうとも、変われるんだと。私は一大事の時に、「鈴木先生!お祈りお願いします!」と図々しく頼みます。
    祈りの力はこれほど大きいのだと、私も日々祈っています。どうぞ末永くお元気で、私たちの心に光を導いてくださいませ。