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人材不足が起きている要因
人口減少や少子化の加速によって、現在、企業の51%が正社員不足、30%が非正社員不足の状況です。以下では、人材不足が起きている原因について見ていきます。
[参照]:人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月) | TDB景気動向オンライン (tdb-di.com)
日本が人手不足となっているわけ
働ける世代である生産年齢15〜64歳の人口が、少子化によって減少していることが問題となっています。
【人材の不足による問題】
十分なスキルや学歴などがあるにもかかわらず、定職に就かない人たちの増加も人手不足に拍車をかけています。
給与と仕事内容が見合っていないと感じて、仕事に対する意欲やモチベーションが上がらないことなどが定職に就かない主な原因のようです。
【技術者・職人が減っている問題】
技術者・職人の人手不足も深刻です。働き続けてきた世代が高齢となり、後継者を必要としていますが、人口減少と過疎化のために、特に地方では深刻な後継者不足が問題となっています。
労働条件や雇用形態によるもの
【労働条件による問題点】
労働者は、自分の時間を使って仕事をしています。そのため、働いた時間や内容に見合った賃金を受け取れることを期待しています。
長時間働いているのにもかかわらず、給与が想像以上に少なく、昇給もない状態だとしたら仕事への熱意をキープすることは容易ではありません。
休日が十分でなく低賃金という環境で働き続けることになると、おのずと離職者が増えてしまいます。
対して、給与面以外で「福利厚生が充実している」「会社が働きやすい」などのメリットが大きければ、仕事へのモチベーションを保てる可能性は、十分あり得ます。
仕事内容が重労働であっても、給与が相場と比較して高いということであれば、それなりにやり甲斐を感じることもあるでしょう。
【雇用形態による問題点】
終身雇用が当たり前ではなくなった現代において、日本企業では正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトの人たちも、同じ現場で働く企業が増えています。
仕事の内容に格差がなくとも、契約形態によって給与だけでなくキャリアパス制度に差がある場合も、各個人のやる気を失ってしまうことにつながります。
「正規雇用ではない」という理由で昇進が望めない、待遇が不平等であるなどの理不尽さが、離職をしやすい環境をつくり出しているのです。
人材不足・人手不足で考えられるデメリットと解消方法
企業が現在の状況を打破するために、福利厚生や給与面の改善を図れば、人件費が高騰します。あわせて会社も売り上げを上げていかないことには、純利益が減少してしまう可能性が高くなります。
企業にとってのデメリット
人手不足の状態で、同じ業績を求めるのであれば、従業員一人当たりのノルマを増やさざるを得ません。
ノルマや仕事の量が増えたにもかかわらず、その努力は給与に反映されず、割に合わない低賃金である場合、離職率はますます上がります。
新しい社員が就職しても離職率が高ければ、新人に仕事を教える仕事を慢性的に続けなければならず、仕事の効率も悪くなってしまいます。
さらに、人手不足の企業に共通している問題は、休みが自由にとれないことです。長時間労働と長期連続勤務日数などを強いられることにより、体調を崩す人が増えます。結果的に、従業員の生産性・効率性も低くなります。
問題点を解消する方法
新しい人材を雇用していくか、あるいは仕事の量を適切にすることで、一時的に人材不足は解消されるかもしれません。しかし、実はもっと根本的なところに解決策はあるのです。
人材不足を補うために、退職したら新しい人材を雇用すればよいという安易な考え方ではなく、現在雇用している従業員と企業との「エンゲージメント」の向上を図ることが先決です。そうすることで、生産性・効率性をアップさせることできます。
「エンゲージメント」とは、企業と従業員間の信頼関係を築き、企業の掲げる戦略・目標を共有し、共通の目的を持つ同志として協力体制を形成することです。
エンゲージメントの狙いは、以下のとおりです。
・従業員の一人ひとりに、企業の戦略や目標をしっかりと理解させること。
・自分も企業の中の一部であり、貢献者であると認識させること。
・自ら進んで「会社のために働こう」という意欲を持たせること。
企業に対する愛着心が育まれれば、個々が信念を持つことにつながり、自発的な意思によって働くようになります。自らの意思で働くことで士気を高め、個人の最大のパフォーマンスを引き出す可能性も高めます。
そうすると離職する可能性が低くなるため、人材不足を防ぐことにも繋がります。また、労働時間や内容に見合った給与体制であるかを見直すことも対策の一つです。
福利厚生の見直しを図ることも、離職者を防ぐ対策になります。求職する際に、新入社員は「業種」の次に「福利厚生の充実度」を重要視する傾向があるというデータが出ています。
[参照]2023年度 新入社員の会社生活調査(第34回) (sanno.ac.jp)
多くの問題は、その原因となるものはひとつではないため、全体を通して内部を整えていく必要があります。生産性・職場環境の見直し、それに合わせたシステムの導入なども検討されるとよいのではないでしょうか。
採用活動と外部対策の実施
求めている人材の確保が困難である場合、採用活動を見直す必要があるかしれません。
求人募集の方法を見直してみる
ハローワーク、求人誌、求人サイトに条件を掲載し、応募を募るという方法が一般的です。しかし、過去の採用活動において、求めている人材確保がうまくいかなかった場合は、求人方法を見直すことも重要なポイントとなります。
特定の技術者を求めているのであれば、大学・専門学校の掲示板や学内システムを用いて新卒者にアプローチをかけることや、「縁故採用」「リファラル採用」といった親族や知人といったネットワークを上手に活用することも有効です。
幅広い層に低コストで求人広告の打ち出しを考える場合、SNSなどのコミュニティサイトの活用も便利です。不特定多数の人が閲覧する機会を簡単につくることができます。
人材派遣会社を活用し、年齢、性別、採用期間、特定の技術等の条件を提示し、条件に見合った人材を確保する方法も有効的な手段のひとつです。
若くて優秀な外国人労働者を採用する事業主も増えています。言葉の問題や文化・風習の違いから二の足を踏んでいる事業主は、外国人の派遣に強い人材派遣会社を利用することもおすすめです。
求人募集の基本情報で大切なこと
求人募集の基本情報で大切なことは、必要とする人材に見合った採用条件が提示できているか、というところです。
子育て中の女性で、フルタイムでの勤務は難しくても、短時間のみの労働や在宅勤務を希望している優秀な人材も多くいます。求人枠を広げるだけはなく、雇用体制も自由化するなど募集の幅を広げることが重要です。
離職者を防ぐために、福利厚生の見直しが重要と述べましたが、採用においての福利厚生の充実度もポイントです。
まとめ
日本における少子高齢化が人材不足の主な原因ではありますが、働く能力があるにも関わらず、特に理由もなく定職に就かない人の増加の問題も根底にあるということをお伝えしました。
給与や福利厚生の見直しとともに、労働条件の改善や企業との「エンゲージメント」から従業員の意識改革を図るなど、内部的なアプローチにより、優秀な人材の流出を防ぎ、社員一人ひとりのモチベーションを高めることが今後の課題であるといえるでしょう。
採用条件や採用形態を多様化し、採用枠の幅を広げるといったアプローチで優秀な人材を確保することなど、人手不足の解消は、内部的・外部的なダブルのアプローチが効果的です。